金融労連
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2007年3月8日

全国信用金庫協会 会長 大前孝治 殿

全国信用組合中央協会 会長 網代良太郎 殿

全国信用金庫同友会 代表幹事 高橋久雄 殿


申 入 書


 いま、金融業界では、メガバンクがバブル期を上回る空前の利益をあげています。一方で、企業間格差は見られるものの、疲弊した地域経済や中小零細企業の困窮のもとで、少なからぬ地域金融機関は、厳しい経営状態を強いられています。

 また、信用保証協会保証付融資に対する部分保証制度の導入も進められようとしており、中小企業に対する融資環境はますます厳しくなろうとしています。このことが地元の中小零細企業への融資を大幅に制限し、地域経済や労働者の生活に深刻な影響を与えるのは明らかです。

 金融庁は「信用金庫と信用組合の業務形態を抜本的に見直す」方針を固め、地域金融機関の新たな整理・淘汰を進めようとしています。地域や中小企業の特性を無視した市場原理による規制緩和の金融行政が推し進められた結果、「地元の預金を地元に融資という形で還流させる」という地域金融機関の本来の役割が見失われようとしています。

 職場では、リスク商品・高金利ローンなど収益最優先の営業展開が大手を振ってまかり通っており、現場の労働者の間には、「自分たちのやっている仕事が地域のお客さんに喜ばれているのだろうか」と疑問や不安が広がっています。また効率化追求、人員削減・賃金削減が続けられ、健康や生活破壊も深刻になり、将来展望が見えない状況になっているところも生まれています。

 一方で、07春闘では、金融業界を中心に長い間据え置かれてきた初任給を大幅に引き上げて、人材確保に努める動きも生まれています。

 金融労連は、2月2日〜3日の2日間、第1回中央委員会を開催し、2007年春闘方針および重点要求を決定しました。私たちは、この方針にもとづいて運動をすすめるにあたって、労働者の生活と権利を守り、信用金庫ならびに信用組合が協同組織にふさわしい金融機関として、「地域経済の発展に努める」という社会的責任を果すことをのぞむ立場から貴協会に以下のとおり申し入れます。つきましては、申し入れの項目について十分ご検討のうえ、4月13日(金)までに、誠意ある回答を文書にて行われるよう重ねて申し入れるものです。



1、2007年春闘について

(1)金融労働者の労働条件を全国的に向上させていく立場から、以下の「春闘重点要求」について、業界として達成できるよう指導されるとともに、各関係方面に働きかけられること。

 「春闘重点要求」

@ だれでも月額10,000円以上引き上げること。初任給を10,000円以上引き上げること。パートなど時間給労働者の時給を100円以上引き上げること。

A 成果主義賃金の導入・拡大など賃下げをもたらす賃金制度をやめること。

B 全ての銀行・信用金庫・信用組合及び関連会社から月額15万円・時間額1000円未満の賃金をなくすこと。

C 雇用延長を含め、労働者の雇用を確保し、人員の増員を図ること。

D すべての職場で早出を含む時間外手当の不払をなくし完全支給すること。また管理監督者の範囲の見直し等をすすめ、過労死のない職場づくりと真の労働時間短縮を実現すること。

(2)春闘要求に対する回答は、回答指定日に行うよう指導されること。

(3)労働者の生活と労働実態に基づく労働組合の切実な要求に対し「自己資本比率」等を絶対化することなく、真摯に対応するよう指導されること。

(4)2007年春闘賃上げ回答をはじめ、諸要求への回答をするにあたって、労働協約・就業規則の改悪や新人事制度・成果主義賃金の導入、退職年金制度の改訂などの受け入れを条件や前提にしないよう指導されること。

(5)2006年4月より義務化された60歳以上の雇用延長について、その趣旨をふまえ、希望者全員の雇用延長を図るよう指導されること。

(6)争議の解決について(※この項は全国信用金庫協会、全国信用金庫同友会のみ)
 渡島信用金庫に対して、会員代表訴訟の最高裁での確定判決に基づき、伊藤新吉理事長らの経営責任を明らかにし、不当労働行為救済の中央労働委員会命令(確定済み)に基づき、争議の全面解決を図るよう指導するなどして、法令遵守の立場を明確にさせること。


2、合併・事業譲渡、転換などについて

(1)合併・事業譲渡、転換、店舗統廃合、役員導入などについては、労働組合と十分に協議を行い、その意見と要求を十分尊重する旨の事前協議制の確立を図ること。また会員・組合員(出資者)の意見を十分に尊重するよう指導されること。

(2)合併・事業譲渡に際しては、雇用の完全保障を大前提とすること。また、労働条件についても、労使対等による決定の原則に立ち、誠実に団体交渉を行うとともに、社会的にすでに確立されている「労働条件の一方的不利益変更の禁止」原則を遵守するよう指導されること。

(3)法令遵守・企業統治の観点からも、労働組合への支配介入を行わないよう指導されること。


3、地域金融機関の再生に向けて

(1)本来、グローバル・スタンダードの対象外であるはずの地域金融機関に対して、自己資本比率のみで健全性の判定を行うような検査のあり方を改め、地域貢献度など地域経済の実態に見合った地域金融機関用のマニュアルを作成するよう関係当局へ働きかけること。

(2)地域社会に信頼される金融機関として「地域から預かった資金は地域に還元する」という経営姿勢を確立し、投資信託など元本保証のない商品のノルマ販売やサラ金と提携した高金利ローンの取り扱いをやめさせること。

(3)合併・事業譲渡による利用者の切り捨て・サービス低下などをやめ、中小業者の営業や従業員の雇用を守る経営施策を実施するよう指導されること。

(4)事業破綻に際して全額没収された「出資金」を業界として保護すること。また、会員金庫に対する必要な資金援助にあたっては、リストラ「合理化」などを条件としないことはもとより、会員金庫の余資運用などについても信金中金が責任をもって行う等、経営困難に陥った信金については業界全体で支援策を講じること。


4、コンプライアンス(法令遵守)・CSR(企業の社会的責任)の確立について

(1)個人情報流出の原因ともなっている持ち帰り残業や個人の携帯電話の業務使用をなくすよう指導されること。

(2)金融庁が各金融機関に指導している「コンプライアンス休暇」の実施については、労働基準法で労働者の自由利用が認められている年次有給休暇での利用をさせないよう指導されること。

(3)実態を伴わない「管理監督者」の範囲を増やしたり、「ボランティア」などを口実にした悪質な不払い残業隠しを行わないよう指導されること。


5、政治献金について(※この項は全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会のみ)

 協同組織金融機関の立場から、特定の政党への政治献金を行わないこと。



 当申し入れについて、全ての会員金庫(組合)に周知・啓蒙していただくよう要請します。

以  上


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